へんなかがみ : 『歪物洋館』

しかも君達高校生だよね？　こんな時間に女の子だけで。

ん、肝試し？　こんなところで……ああ、この洋館ですか……

ふふふ、こっちから中に入れますよ。

え、なんで知ってるかって？
丁度この洋館のことを調べてるんですよ

この洋館はいつごろから立っているかは分からないんですよ。
でも、とても古いことは確か、ほら、
少なくてもこれ、明治の物ですよ。

実は、この洋館の主は
とてもとても美しい人だったらしいんですよ……
でも、周囲にからは忌み嫌われていたらしいんですよね。

だって、何しろココの女主人は宗教というか、
独自の信仰を持っていて、
毎晩毎晩儀式を繰り返していたらしいんですよ。

え？　どんな儀式かって？　

ほら、ココに犬の石像があるじゃないですか、
コレは犬というより、犬神と言って、
犬を生贄にする事で成立する儀式らしいんですよ。

でも、昔、この周辺には犬があまり居なくて、
躍起になった女主人は山から狐を狩って儀式を続けたんですよ。

ちなみに、狐は犬の仲間だから儀式的に問題なかったのかもね？

そしたらココからが大変、狐なんかを生贄にささげていたせいで、
この屋敷には狐の怨霊が沢山沢山取り付いちゃって
のろわれちゃったのさ。

のろわれた女主人はどうなったかって？

そりゃぁ、大変な目に会ってね、美しかった容姿は崩れ、
人では無いものへと変貌していき、
その心までも化物へと変わってしまったんだ。

でも、一日に短い間だけ、人としての心を取り戻し、鏡の前、
そう、この巨大な姿見の前で涙を流していたらしい。

長い間女主人は一人泣き続け、流した涙は
床の絨毯にしみこんでてね、
ほら、君達が立っている足元の絨毯、色が変色してるだろ？

流した涙のせいで色が変わってしまったらしいんだ。

それからというもの、女主人が死んだ後、
毎晩毎晩真夜中の0時丁度になると、
この屋敷からは女性の鳴き声が聞こえてくる……

おやおや、平気そうな顔してるね、君達。

最近の子供達は想像力が足りないのか、
怖がってくれないのは悲しいものだ……

さて、ここで、気になることは２つ出てくるよね？

１つは、どんな化物になってしまったのか。

もう１つは、どうしてそんな儀式をしていたのか。

実は自分はソレを調べに着たんだよ。

それでね、この話の最大の落ちはね……

鏡の前に女性が立つと、女主人の幽霊が出てきて、
同じ呪いをかけられちゃうんだよ。

そう、その鏡で、その場所でね……

ははは、そんなに驚かなくてもいいさ、怖がるヒツヨウもない。

だって、もう君達のろわれているんだから
そうそう、この鏡は、何があっても
元の姿しか映さないという話だし、わかんないだろうね、

女主人は、元の自分の姿を見て、泣いていたんだよ。

ほら、そっちの古ぼけた鏡で君達の顔、見てみなよ。

酷い顔だよ、まるで鼻はそぎ落としたみたいに
なくなってるじゃないか、しかも鼻の穴がすごくでかいねぇ、
片方で元の顔ぐらいあるんじゃないのかい？

鼻の穴が。

え？　なに？　うまくしゃべれない？

だってそりゃそうでしょ、君達の口、いや、顎だね。
君達の顎も首も体と一体化してるんだよ？
上顎だけうごかさないとしゃべれるわけがない。

しかし、顔中ほぼ鼻の穴っていうのもあわれだねぇ、

なに？　くさい？　そりゃそうでしょ、

自分の手、見てごらんよ、
人の形はしてないのはそうだけど、ネバネバしてるだろ？

君の汗だよ……
ドロドロでネバネバした汗が常に出っ放しなんだね。

その歪な体も酷いもんだ。腰がなくなってしまってるし、
4本の足で歩くのも大変そうだね。

ふふふ、じゃあ、頑張って生きるんだね……

え？　俺かい？

俺は……


END

　　　×　　　×　　　×

というわけで相変わらず凄いことになってしまいましたｗ
いつにも増してイラストが楽識さんのイメージにあってるかどうか
自信がないですが……



なんにせよ、非常に楽しく描くことができたのは確かです。
楽識さん、今回も素晴らしいお話をありがとうございました。

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