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『まほうつかいになりたかった女の子の話』その2

2009年04月25日 01:05

※4/27追記――――――――――――――――――――――
 抜けていた部分(どんなに裾をまくろうとしても~以下)を補完。
 どうもすみませんでした。
―――――――――――――――――――――――――――

肥満化スレの動きが活発でとても嬉しい今日この頃。
SSもイラストもいちいちクオリティが高くて、
毎日のぞきに行ってはオカズと刺激を頂いております。

そんなこんなで第2話をお送りいたします。

今北さん用あらすじ
・魔法がつかえたらなあと夢見る少女・ジル。
・ある日、弟から西の森で魔法使いにあったという情報が。
・そんなわけでそいつがいるらしい森の小屋までやってきたのだ

はじめから読む方はその1へどうぞ。

   ×   ×   ×

「あ、あれだよ!」
「へ?」
「俺が出会った魔法使いのお姉さん、あれ着てた」
「ほ……本当に?」

それは鮮やかなピンク色をした、奇妙なローブでした。
素材も、仕立ても、ジルたちの村では一度も見たことの無いもの。
いえ、彼女は知りませんが、どんな大きな街にだって、
こんな不思議な服を目にすることはできないでしょう。

ひとつだけ分かるのは、それが魔力を帯びたものだということ。
なんら魔法の修行をしたことのないジルにすら
はっきり感じとれる妖しいオーラが、
その法衣から立ち昇っています。
魔法へのあこがれを心に抱いていた少女にとって、
それはあまりにも魅力的なアイテム。
ほとんど無意識に、ジルはそれを手に取っていました。

「ねえ、勝手にさわって良いのかよ」
「え?」
「人のもんだろ」
「う、うるさいわね! ちょっと見るだけじゃない」

人のものを、勝手に触ってはいけない。
ましてそれが得体の知れない
魔法使いの所有物であるならなおのこと……
弟に言われるまでもなく、そんなことは分かっています。
でも。
単なる興味や好奇心ではすまない”何か”が、
ジルの背中をぐいぐい押してくるのでした。

ちょっと見るだけ。
ちょっと触るだけ。
ちょっと……ほんのちょっとだけ、着てみるだけ。
そうだよね、すぐ脱いで元に戻しておけば、
何の問題もないはずだよね。

「うん」

自分の考えにひとりでうなずいて
思い切ってばさり、その大振りなローブを頭から被りました。
しっとりと肌になじむ不思議な質感を楽しみながら袖を通し、
頭を出し……
いえ、やはり大人用にしつらえてあるらしいそのサイズは、
ジルにとっては大きすぎたようです。
あまりにもぶかぶかで襟がどこにあるのか分からず、
なかなか頭を出すことができません。

「おい、何やってんだよ姉ちゃん」
「うるさいわね、ちょっと手伝いなさいよ!」

ローブの中からくぐもった声で叫ぶジル。
今となっては似合う似合わない以前の問題なのは
明らかなのですが、もはやほとんどムキになっています。
姉が一度こうなったら、どうしたって
自分の意見などに耳を傾けないことを、弟はよく知っていました。

「わ、分かったよ、ほら、ここがフードで……あれ?」

仕方なく手を貸そうとしたケチャが、ふと言葉を詰まらせました。
妙です。
いつのまにかフードが頭を通すべき襟穴にぴったり被さり、
その出口をふさいでしまっています。
これでは頭が通るはずもありません。
いえ、気付けば袖口も。
ジルの手首を柔らかく包み込もうとするかのように、
ちいさく縮こまっているようなのでした。

「ね、姉ちゃん?」
「何よ、はやくなんとかしなさいよ」
「変だよこれ」
「は?」
「ぬ、脱いだ方がいいよ」
「バカ言ってんじゃないわよ、ああもう使えないわね、
いいわ、あたしが自分で……ん?」

ジルもまた、異変に気付きます。
ローブの布地が、なんだか妙に……
重くなってきているように思えたのです。
しっとりとしたビロードのようなさわり心地が、どちらかといえば
湿り気を含んだなめし皮のようなそれに変っています。
ジルに不似合いなブカブカのシルエットを保ちながらも、
少しずつ熱を帯びて、ジルの身体にまとわりついてきている、
服というよりは……そう、生き物。
そんなイメージが、彼女の脳裏によぎります。
ぞく、と鳥肌が立ちました。

「や、やっぱり脱ごうかな、あんたがそんなに言うんなら」
「うん、それがいいって」
「よいしょ、えっと、よいしょ……あ、あれ?」
「どうしたの?」
「よいしょ、よいしょ、おかしいな……脱げない、
ぬ、脱げないよこれ?」

こんなにブカブカなのに、ちっともきつくないのに。
ついさっきばさりと頭から被っただけのローブが、脱げない。
そんな馬鹿な話があるでしょうか。
しかし、どんなに裾をまくろうとしても、
その下からはジルの白い脚ではなく、
余ったピンク色の生地が顔をのぞかせるばかり。

ぬらぬらと嘲笑うような、もはや布とは思われぬ
そのローブの内側で少女の混乱と焦燥は加速し、
心臓は踊り、呼吸もまた荒くなっていきます。
通気性に乏しいと思われるその厚い生地の奥で、
外界から遮断されたジルは
急速に酸欠を引き起こしはじめていました。

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」

姉のただならぬ様子を察し、ケチャも懸命に手助けしようとします。
しかしまさにその瞬間、ローブは鈍い光沢を放ちながら、
はっきり目に見える速度で収縮を始めたのです。

――ぐちゅ。

ひどく鈍重な獣が餌を咀嚼するような重く湿った音を立てて、
もはや法衣の面影を残さないそのピンク色の塊が蠢きます。

――ぐちゅ、ぐちゅ。

「姉ちゃん、姉ちゃん!」

なすすべもなくただおろおろと呼びかけることしかできない
ケチャの声をききながら、ジルはついに床に膝をつきました。
当然、外側の変化に伴って、
ローブの裏地もまたその有様を大きく変えていたのです。
やわらかくぶよぶよとした、餅のような物質になったそれは
あきらかに質量を増し、ジルの身体にまとわりついてきます。
不思議な匂いのする液体がどこからともなくじわじわと染み出し、
ジルの汗と涙、涎や鼻水と混じりあいます。

「―――――ッ!!」

とうとう恐怖が限界に達し、悲鳴をあげようとして大きく開けた
ジルの口の中に、先ほどまで裏地だった
やわらかな物質がなだれこんできました。
吐き出そうとしても、それらはたちまちジルの口腔を占拠し、
舌に絡みつき、気管や食堂へと触手を伸ばしていきます。
咳き込むことすら許されず、ジルのパニックはさらに加速しました。
めちゃくちゃに手足を振り回し、ありったけの力を振り絞って
ローブを振りほどこうとします。
もはや息苦しいどころではありません。
このままでは、確実に窒息が待っているのです。
それは文字通り、必死。

もう、魔法なんていらないから。
もう、普通の女の子でいいから。
もう――いい子になるから。

ぬらぬらと蠢く生地の中で、
少しずつ薄れていく意識を懸命につなぎとめながら
ジルはあらゆるものに祈りをささげていました。

ぐちゅん。

神に。

ぐちゅん。

父に。

ぐちゅん。

母に――

「お姉ちゃんッ!」

すぐそばで叫んでいるはずのケチャの悲鳴が、
やけに遠くから聞こえてきます。
ああ、あんたのこと、忘れてた。
ごめんね、あはは。
うん、ありがとう。
でもあたし、もう――ダ……メ……

視界がゆっくりと白くかすんでいって、ジルは生まれてはじめて、
リアルに自分の死を意識しました。

いやだ――死ぬだなんて――い――や――

思考までもがスローになって、眠気にも似た優しく残酷な終焉が
彼女をつつみこんでいこうとした、まさにその時。
正体不明の衝撃が、彼女の体を走り抜けました。
それは遮断されていた外界と彼女をつなぐ、一筋の蜘蛛の糸。

そう、まったく唐突に呼吸が楽になったのです。
冷たく新鮮な空気が口から流れ込み、ジルの肺は満たされて――
少女は、酸素がこんなに美味しいものだとはじめて知りました。

   ×   ×   ×

3話へ続きます。

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コメント

  1. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』その2

    ピンク色? ……ヤバイ、先が読めねぇw

    一体化してしまったピンクの代物が一体何なのか、かなり楽しみですね。

    ん……ピンク? ぶーぶー?

  2. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』その2

    >楽識さん
    まあこの時点でばれてても問題はないわけですが、
    楽しみにしていただけるのなら
    それにこしたことはありませんね。
    とはいえ、次回でほぼ明らかになるかとw

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