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もりのくまさん:前編

2012年04月30日 19:24

えー、2か月ぶりのご無沙汰になります。

流行からかなり遅れてモンハンに手を出したはいいけど、そもそもアクションが上手くない自分のぼっちプレイに限界を感じて、ほぼ積んでしまったgreenbackです。
オトモアイルーの2匹も頑張ってくれたけど……いや、いずれまたやる。きっとたぶん、気が向いたら。

それはそれとしてアオアシラかわいいよアオアシラ。

以前獣化スレで話題になってましたが、このゲームの肝とも言える「モンスターから皮やら牙やらを剥いで装備を作る」ってシステムは、こっち側の人間にとってはTFフラグ以外の何ものでもないですね。
狩られた側からしてみれば自分をしとめた憎い相手なわけで、呪いの一つもかけてやらなきゃ気が済まないだろうと思うわけです。

そんなことを考えながらゆるゆる書いたSSとイラスト。
前後編でお届けしたいと思います。

  ×   ×   ×

精製屋に仕立ててもらったばかりアシラ装備に身を包んで、彼女はその防御力と機動性にうっとりしていた。
淡いブルーの毛皮は意外に厚みがあり、かなりの攻撃にもしっかり耐えてくれる。
それでありながら驚くほど軽くしなやかで、双剣使いの彼女が繰り出す激しいアクションにも何ら妨げにならない。
最初に村から支給された装備にさして不満も抱かずにいくつかのクエストをこなしてきた彼女だったが、こうして比較してみるとやっぱり全然違う。

asra1.jpg


なにより、自分でしとめて自分ではぎ取った獲物をこうして身にまとっていると、駆け出しながら一人前のハンターの入り口ぐらいには立てたのかなあと思って嬉しくなってしまう。
はじめはガーグァ1羽を狩るのにもおっかなびっくりだったのに、いつの間にかずいぶんとたくましくなったものだ。
それなりに度胸もついたし、攻撃を避けるコツも分かってきた。肉を焼くのもそこそこ上手くなったと思う。武器の扱いがこなれてくるのに従って、腕だってずいぶん太くなって……

「あれ?」

ふと違和感を覚える。たしかに力はついたと思うが、いくらなんでもここまで筋肉が張っていただろうか。
新しく仕立てた手甲のせいでそんな風に見えるだけ?
試しにちょっと脱いでみようとして、指がなんだか動かしにくいことに気付く。
関節が固いというか、重いというか、ちょっと痛い。
不審に思って指先に目をやれば、いつの間にかずいぶん爪が伸びている。
指の先端から2センチ近くはあるだろうか。
心なしか厚みがあり、先端が尖っているように見えなくもない。
ここしばらく手入れしていなかったとはいえ、いくらなんでもこれは不自然だ。
とにかく、ちゃんと調べた方がいいだろう。不器用な指と変形した爪に手こずりながら、なんとか手甲を外しにかかる。
装備したときの何倍もの手間と時間がかかって、気づいたときには額にびっしり汗をかいていた。

ぱちん。
軽快な音を立てて、左腕の留め具が外れる。

「……ふう」

思わず、安堵のため息が漏れた。だが。

「え?」

それだけだった。外れたのは、手甲をつなぎとめていた金具だけ。
そこからぱらりとほどけるはずの皮帯が、毛皮が、なぜか少しも動かない。
そう、まるで彼女の肌に貼り付いてしまったかのように。

「あは、あはは、そんなバカな」

自分の頭に浮かんだ妄想に乾いた笑いを漏らしながら、彼女は左腕を振り回す。
でも、駄目。
右手で手甲をつかみ、力まかせに引き剥がそうとする。
それでも、駄目。
やけになって毛皮に噛みついて引っ張ると、数本の毛が抜けた。
その瞬間、左腕に走ったちくりとした痛みが、まるで自分自身の体毛を抜いた時のようで――
彼女は、ごくりと唾を飲み込んだ。

おかしい。
何か、おそらくはとても不吉な何かが起ころうとしている。
彼女は本能的にそれを悟り、いったんクエストを中断して村に戻ろうとした。
賢明な判断だろう。
この状況下ではベストといっても良い。
だが、残念ながらその選択は少しだけ――ほんの少しだけ、遅かった。

ぱき。
ばきべき。

キャンプに向かってきびすを返したのとほぼ同時に、目の前の茂みを踏み分けて、彼女の前にのっそりと巨体が現れる。
体長6メートルは優にあるだろう、大物のアオアシラ。
毛皮の上からでも確認できる古傷の数々は、そいつがここまで育つ間に対峙し、重ねてきた勝利の歴史を物語っているのだろう。
獲物である草食モンスターや同種はもとより、場合によってはより上位のモンスターにすら背中を見せることなく、戦いを挑んできたに違いない。

格が違う――けして経験豊富とは言えない彼女にも、はっきり分かった。
自分ごときが太刀打ちできるレベルの相手じゃない。
ゆっくりと距離をとろうとした彼女に向かって、アオアシラが吠える。
内臓をまるごと吹き飛ばされるような、桁外れの大音響。
一瞬で恐怖が臨界点に達し、彼女は全力で逃げだした――つもりだった。

慌てていれば、足がもつれることぐらいはあるだろう。
こんな状況下であれば、腰が抜けてしまってもおかしくはない。
だから、そこで彼女が転んで、なかなか立ち上がることができなかったのも無理からぬこと。
それでも必死で這いずって逃走を試みようとしたことも、生物としての生存本能に忠実な行為といえなくもない。

「たすけて、たすけ、た、あ、あう、ひぐ」

人語の通じるはずのない相手に命乞いをして、あげくに泣き出してしまうというのはさすがにハンターとしては失格かもしれないが、いかんせん彼女は新米。
まだ若いひとりの少女として見れば、理解の範疇に入るだろう。
だが。

「う、うぅ、うわあぁあああッ!」

もはや言葉にすらならない悲鳴をあげながら、逃げ出したその姿勢。
四つん這いで、両手、両足を使って走るその様子は、ハンターとしても、ひとりの少女としても、あきらかに異常な動作だった。
だがその速度は、二本の足で走っていた先ほどまでに比べても、けして引けをとらない。
それどころか、四肢で地面を掴むその走法は、むしろ安定感を増しているようにすら感じられた。
おかしな話である。人間の骨格が、こんな動きを許すはずがない。
長すぎる足が、短かすぎる腕が、二足歩行に徳化した全身の筋肉が、妨げにならないわけがない。
彼女自身、どうして自分がこんな逃げ方をしているのか把握できていないのだ。

だが、状況を整理するような時間も、余裕もなかった。
先ほどのアオアシラの足音が、息づかいが、すぐ背後に迫ってきているのをはっきり感じる。
もとより牙獣のダッシュ力はすさまじい。
ふだんはこちらからのアプローチに反撃しているだけだが、相手に本気でこちらを追うつもりがある場合、フィールド上で逃げ切ることなどほぼ不可能なのだ。
彼女は必死で走りながら、酸欠でかすむ脳を精一杯動かして――そして思い出す。

モドリ玉。

あれを使えば、一瞬でキャンプに帰れる!
あわててポーチの中を探ろうとして、彼女は息をのんだ。
――何、これ……?
ポーチって、こんなに小さかったっけ?
こんなに頼りなくて、こんなにもろいものだっけ?
ちょっと爪がひっかかったくらいで、簡単にちぎれてしまうようなものだったっけ?
ポーチが、その中のモドリ玉が、たったひとつの希望が、無情にも彼女の手から転がり落ちていく。
拾いに行くことが自殺行為なのは分かっていた。だから、立ち止まりはしなかった。
でも、そこから瞬時に思考を切り替えて、次の手を考え始めるほど彼女の精神はタフにはできていなかった。
どうしようという動揺が、ポーチへの未練が、ほんの少しだけ彼女の足を鈍らせた。

でも、それがいけなかった。

   ×   ×   ×

後編に続く。

剣のデザインが適当なのは内緒。
手甲に毛皮なんか使ってない、ていうかそもそもアオアシラの腕に毛が生えてないのも内緒。
ごめんなさい反省してます。
今後はなるべくちゃんと資料見ながら書く(描く)ようにします。

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