へんなかがみ : 猫じゃねえのかよ(#ﾟДﾟ) ｺﾞﾙｧ!!

亥年の正月あたりに、どこに出すあてもなく描いたイノブタ化娘さん。
今年が丑年だから、あれから２年も経ってるんですな。

　　　×　　　×　　　×

あたし、いつになったら戻れるんだろう。

うちの扉に白羽の矢が立ったあの年の元旦、
あたしはあたしじゃなくなった。
鼻が上を向いて、牙が生えて、
ひどく毛深くなって、身体全体がずんぐりして。
悲鳴をあげるあたしのもとに、あいつは煙のように現われた。

「おめでとう！
あなたは来年の“としおんな”に選ばれました。
これから１年間、その姿で“福”をふりまいていただきます！」

すごい泣いたけど、それでもあたしは耐えた。
家中の鏡を叩き割って、外出時には厚着とマスクで身体を包み、
1年が過ぎ去るのを待ち続けた。

それなのに。

待ちに待った１年後、あたしの身体は……元に戻らなかった。
それどころか、足には蹄も生えて、耳がとがって。
訳が分からないまま時間だけが過ぎて行って、
2本の足で立つのが難しくなってきた頃、あたしは気付いた。
あいつが「1年間たったら元に戻る」なんて、言っていないことを。

「その通り。
あなたはたしかに『あの姿』で1年間すごして、
そしてまた違う姿になった。
私、ウソなんかついてませんよ？」

――でも、それじゃいつあたしは元に戻れるの？
そうききたかったのに、
その時のあたしにはもう人間の言葉が発音できなくなっていて。
あいつはふたたび煙のように去り、それっきり。

あたしは今日も、この身体のまま生きている。
いつか元に戻れる日が来るのを、むなしく夢見ながら。

　　　×　　　×　　　×

えーと、はい。
猫のほうもがんばります。

ハッピーいのしし (2006/10/10) 不明 商品詳細を見る