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『CHAOSROOM』 前編

2009年06月30日 22:22

一周年記念企画の際に、EnjoyNowの現在楽識さんから
素敵なSSを頂いておりまして。
なかなかタイミングが合わなくて出しそびれていたのですが、
ようやく掲載の運びになりました。

現在楽識さん、および楽識ファンの皆さん、
お待たせしてまことにすみませんでした。

いつものようにというか、いつも以上に濃厚な描写が冴え渡る
愚者ワールド、心してお楽しみ下さい。

   ×   ×   ×


花見シーズンも過ぎ、サクラも散って葉桜となった春の夜。
一人の男が、ふらふらの足取りで、
人気の無い夜道を歩いている。
ちょっと中性的な顔立ちは、酒で赤みを帯び、
よくみれば高そうなスーツは着崩れしており、
弛んだネクタイはいかにもよっていると言った感じになっている。
きっと、きちんとしていれば、
それなりに格好もついたサラリーマンと言った具合だろうか。

「くそぉ……俺が何したって言うんだよ……」

泣き言のように言う男、明は、
泣きながら千鳥足で壁にぶつかりつつ、目的もなく歩いている。

「人の趣味覗き見やがって……」

口からは独り言の愚痴がこぼれ、
その辺の電柱を蹴っては、歩きを繰り返している。

「んあ? んなところに店なんかあったのか?」

人気の無いところにぽつんと置いてある看板。

『BAR Chaos Room』

ただそう書いてあるだけの看板、
ちょっと無骨な扉からはどこか引き寄せられるような感じがする。

「入ってみるか……まだのみたりねぇし」

そう言って、明はその扉に手をかけた。

『いらっしゃいませ』

シンプルながらも小奇麗な店内。
カウンターに4席、ボックス席が2席あり、
明は迷わずカウンターにつぶれるように座り込み、

「なんか強烈な酒くれ」

バーテン?の男にそういった。

『お客さん、相当飲んでますね』

酒臭く、足取りも不安定な明を見て、
バーテン……にはゼンゼン見えない男は、
カクテルを作りながら明に問いかける。

「あ? 飲んでるよ、もう飲みまくりだ。俺の人生終ったんだからよ」

顔をあげ、明はバーテンの顔をじーとみる。

「にぃちゃん、変な格好してるなぁ」

金色の仮面に、白いコートのような格好。

仕事しやすいようにところどころ縛って
体にまとわり付くような格好で、シェイカーを振る。

『ははは、よく言われますよ、はい、どうぞ』

そう言って、バーテンはグラスにカクテルを注ぐ。

「これは?」

明はそのカクテルを見て、バーテンに尋ねる。

『X-Y-Z、人生が終ってるって言うお客さんのために作りました』

なんと皮肉なカクテルだろうか、そう思いながらも、
文句を言うわけでもなく、明はそのカクテルを飲んだ。

「はぁ……」

一気に飲み終え、ため息混じりにカウンターに崩れ落ちる明。

『お客さん、どうかしたんですか?』

バーテンは水の入ったグラスを明の側に置き、
事情を聞こうとする。

「あ? ナンだよ、てめぇ……てめぇも俺を笑うのか?」

『相当よってますねぇ……仕方ない』

そう言って、バーテンは、指を弾いた。

「あ?」

何か変な感覚がして、明は体を起こす。
ぱっと見て、特に変化は感じられない。

「ん? ……ん!!!」

気のせいかと思ったが、かなりすわりが悪い。
自分の股間に手を伸ばしてみると、
本来ソコにあるはずの物の感触がない。

「!!! な、無い!?」

酔っていることと、ありえない現象に慌ててズボンを脱ぎ、
下着を下ろす。

『酔いは醒めましたか?』

にこっと笑うバーテン。

「ない!!! 無い……」

顔が真っ青になりつつ、バーテンをにらみつける明。

『ははは、落ち着いてください』

「落ち着いてられるか!!! てめぇ、何しやがった!!」

体は男のままなのに、股間だけ女性となった明は、
まくし立てるようにバーテンに言い寄る。

『ちょっとからかってるだけですよ。面白いでしょ?』

カウンターを挟んで困惑する明を面白がるバーテン。

『んで、お客さん、何があったのか、教えてくれませんかね?』

どうやら、しゃべらなければこの状況を打破できないと
酔いが吹っ飛んだ頭で理解して、服を直し、
違和感満載の座り心地でいすに座る明。

「……てめぇ、何ものだよ」

『おっと、紹介が遅れましたね』

そう言って、バーテンは、仮面の位置を調整し、
コートを舞わせにこっと笑う。

『俺は愚者……気まぐれで店なんか作って
 人の愚痴を聞かせてもらってますよ』

あまりにも不気味な、そして不可思議な存在に、
明は驚きも、恐怖も吹っ飛び、笑いが起きる。
もしかして、自分は酔っ払いすぎているのかもしれない。
何よりも、待ってましたといわんばかりに、
明の興味と、興奮が舞い上がってきた。

「ははは、アンちゃん、おもしろいね……
 いいぜ、聞かせてやるよ。
 こんな状況、俺の好きなシュチュエーションだからな」

いつの間にか、股間が少し湿り気を帯びていることに
気がついたが、もはやそんなことはどうでもいい。
明は、今この瞬間、今まで溜まっていた不満を全てぶちまけた。


酔いつぶれ、カウンターで眠りこけた明を横目に、
愚者は空いたグラスを下げつつ、
先ほどまでの話を頭の中でまとめた。

この男、明の年齢は25歳。 元、サラリーマン。
趣味はインターネットサーフィンでのイラストや、
小説サイトめぐり。
ココまでは普通といえば普通だろう。

『まあ、この手の趣味の奴は……
 結構いるだろうからなぁ、身近にも沢山居るし……』

そう言って、ついつい愚者は
頭の中でそう言う人間の心当たりを思い浮かべる。

人体改造マニア。
愚者自身がそうカテゴリーしているマニアックな性癖。
主に女性、時には男性だが、人の体をモトモトの姿から
異なる形に変化させることを好む人々のこと。

『運が悪いとしか言いようが無いというか、
 この人が無用心というか……』

話をまとめると、この明という男は、その手の趣味の持ち主で、
自分が持ち歩くノートパソコンにその手の画像やリンクが
集まっており、いつでもソレをみては楽しんでいたらしい。
ただ、運悪く、そのパソコンをつけっぱなしで会社において
トイレをしているうちに女性社員たちに中をいじられたらしく、
その趣味が暴露、
車内に怪文書として出回り、人としての信用は崩壊。
女性社員たちには変態扱いされ、トドメに上司であった女部長に
横領したという濡れ衣をかけられ、会社を解雇されたらしい。

『……まあ、ココまで来ると、かわいそう過ぎるな』

部下からもセクハラの疑いもかけられ、上司からは横領の疑惑、
完全にはめられたといか言いようが無い。
酒を勢いよく飲みながら号泣し、
愚痴を濁流のようにぶちまけていた明が哀れにしか思えないのだ。

『しかたねぇか……面白そうだし……やるかな』

そう言って、愚者は完璧に酔いつぶれている明を置いて、
その姿をぼやかし、消えた。

『さぁ、愚かなる行為、始めさせてもらおう』



「ふふふ~~」
「部長、ご機嫌ですね」
「そう言う操だって部長とおんなじくらいご機嫌じゃん」

3人組のOLが仕事終わりに軽く飲む感じで、ビールを飲んでいる。
彼女らのテンションの上がり方は異常だ。
完全に予約制の個室で
プライベートがもれることが無いということもあって、
ボロボロと本音がこぼれてくる。

「まさかとっさに考えたといえ、
 こうもうまくいくとは思わなかったわね」

そう言って、3人のうち、一番の年上で、部長の薗崎茜は、
豪快にビールの大ジョッキを一気飲みした。

「本当ですね、部長w 
 私達もおかげでお金がてにはいるしねぇ~~真央w」
「うんwこんなご時勢に500万も手に入るなんてね」

そう言って、篠崎操と、遠藤真央は小さく中ジョッキで乾杯し、
ビールを飲んでいく。

「でも、部長も悪ですねぇ~~だてに三十路じゃないですね」
「誰が三十路よ、まだ28、あんた達と5つつしかかわらないわよ」
「え~~うそぉ~~」

女同士でワイワイと飲んでいる様は本当に楽しそうだ。

「確かに篠崎さんみたいに黒くて綺麗な髪してないけど、
 私だって髪のお手入れは欠かさないのよ?」

そう言って、茜は、自分の茶色っぽい肩にかかった髪を
手すきしてみせる。

「私も操みたいなさらさらの長髪あこがれちゃうなぁ~~」

真央も自分のショートヘアを指でつまみ、
うらやましそうに操を見ている。

「遠藤さん、せっかくお金が入るんだし、
 いいシャンプーとリンス買いましょう」
「はい部長、そうしましょうよ、
 ブランドのいいの沢山しってますからw」

ニコニコとして、大金の使い道を思案する3人。
やはり、化粧品やおしゃれにお金を使いたいのだろうか。

「でも真央もうまくやったわねぇ~~その胸つかって誘惑して」

そう言って操は真央の巨乳を触る。

「きゃ、やめてよぉ~~」
「いいじゃないの~~この巨乳私にも分けてほしいくらいねw」

巨乳をもむ操を茜はニコニコしながら見守っている。

「はぁ~~そう言う篠崎さんもいい御尻してるわねぇ~~
 形もいいし大きいし」

いつの間にか、焼酎のグラスを手にしている茜。

「部長だって28の割に
 私達よりお肌すべすべじゃないですか~~」

キャキャ言いながらも楽しく宴会のように酒を飲む3人。
ふと、茜は妙なことに気がついた。

「そういえば、注文した料理こないわねぇ~~」

30分以上待たされているのに、一向に料理が届かない。

「お酒もソロソロ追加したいですしかけてみますか?」

そう言って、操は内線電話を手に取り、受話器を耳に当てる。

『お客様……ようこそ、ChaosRoomへ』

受話器から聞こえる奇妙な声。

「え? 何?」

受話器を手から落とし、混乱する操。

「え、ねぇ、コレ、どういうこと?」

真央は自分の携帯電話をみて驚く。
電話は圏外と表示され、時計の部分が狂っている。

「なんなの?」

茜の腕時計も針が全ておかしな動きをしている。

『お客さんみたいな人に特別なもの、用意してあげるさ』

その言葉と同時に、部屋の入り口に一つの人影が現われた。
 
「な、何? 何者?」

金色の仮面に、純白のコート姿の侵入者に3人は怯えている。

『こんばんわ、極悪人のお三方』

礼儀正しく、軽くお辞儀し、愚者は、指を弾く。

『あんたらの悪行、聞いちゃったからさぁ~~』

まるで時代劇に出てくる主人公のようなノリで3人に近寄る愚者。

『天誅というか、人誅っていうわけじゃないけど、
 お仕置きタイムはじめさせてもらおうか』

3人は腰を抜かしそうになるが、愚者から極力離れようとする。

「な、何? 何するの? こ、殺すの?」

茜は歯を震わせながらも、愚者に尋ねる。

『死んだほうが楽だって思えるように……してやるさ!!』


   ×   ×   ×


ボリュームが凄いので3~4回連載にしようかとも思ったんですが
勢い重視で前後編の2分割にさせていただきました。
次回・後編は例によってgreenbackのしょっぱい挿絵付き。
素晴らしい本編のついでに楽しんで頂ければ幸いです。

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コメント

  1. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『CHAOSROOM』 前編

    大ボリューム特大級のCHAOSで今回はお届けさせてもらいました。

    もう今回はてんこ盛りなので、後編の挿絵がちょっと楽しみになりますw

  2. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『CHAOSROOM』 前編

    >現在楽識さん
    返信も更新も遅くなってすみません。
    ご期待に応えられるような絵ではなくて恐縮です。
    お邪魔にならないように本編の後に載せたんですが、
    本編との食い違いが気になるようでしたらご一報下さい。
    イラストのみ削除させていただきます。

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