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『アダジミガ』 後編

2008年06月05日 23:55

ケンジが買い物をしてきたお店は、
ゴゴT。さんの「豚スーツ」に出てきたお店をイメージしてます。
また、コーディネートネタは紅珠さんの日記から。

お2人にはこの場を借りて、厚く御礼申しあげます。

あ、すぐ下なんで分かるかとは思いますが、
未読の方は前編から読まれるといいかと思われます。

では、続きをどうぞ。
   ×   ×   ×

半狂乱になってワンピースを脱ごうとするミカの表情から、
もはやそれが何の冗談でもないことは明らかだった。
慌ててそれを脱がしにかかる男たち。
しかし……

「痛い! 痛い痛い!」

ケンジがワンピースのすそとおぼしき箇所をつかんだ瞬間、
ミカが大きな声で叫んだ。

「痛いって……まだ引っ張ってもいないんだぜ?」
「だって痛いんだもん! あたしの肉までつかまないでよ!」
「そんなことしてねえって」
「嘘! だってはっきりつかまれた感覚が……」

言いながら、その言葉の意味を理解したのだろう。
ミカは絶句した。
ワンピースをつかまれたのに、
自分の肉をつかまれた感覚があった。
それは。
つまり。

「嫌ぁあああああ!」

未だに蠕動と侵食を続けるワンピースの胸元を、
ミカは全力で引きちぎろうとする。
しかし、皮膚にしっかりと食いついているその衣装には、
切り裂くためのとっかかりそのものが存在していない。
いまだ正体の分からない恐怖にかられ、
絶叫しながら無駄な努力を続ける彼女の様子を、
2人の男達はただただ見守ることしかできなかった。
そんなミカの努力を嘲笑うかのように、
かつてワンピースだったそいつは侵略の速度をあげていく。

「あ……ああ……」

抵抗に疲れ果て、座り込んだ彼女の身体の表面を
緑色のねばねばが覆い尽くすまで、
1分もかからなかった。
活発に伸縮を繰り返していたそいつは、
少しずつその動きを緩めて行き……
やがて満足そうに動きを止める。
最初に口を開いたのはユウゴだった。

「……お、おい、ミカ?」
「だ、大丈夫か?」
「……最悪だよ……」

顔も隙間なく緑色のそれに覆われていながら、
意外にもしっかりした口調で返事をしたことで、
男たちにはわずかな安堵が生まれた。

「だ、だよな。それじゃあアレだな、
とりあえず病院いかねえと」
「そうだ、病院病院。これやっぱり皮膚科でいいのか?」

あわてて携帯を取り出し、最寄の病院を調べ出すケンジ。

「待ってろよ、すぐとってやるから」
「あ……うん……え、あれ?」
「どうした?」
「ペンダントが……」

ペンダントの“信号”が、
さっきとは違ったパターンで点滅を再開する。

「あ……ああっ、熱いっ!
身体が……身体が熱いよぉっ!
ぐ、あ……あがっ、がががッ!!」

がくがくと全身を振るわせだすミカ。
緑色に覆い尽くされた彼女のシルエットが
少しずつ変形を開始する。
大きく、だらしない形に膨張していく、両胸と腹部。
対照的に細く、貧相にちぢこまっていく、両腕と両足。
指は節くれだって、気味の悪い形に成長を遂げる。
ロバのように長く伸びる両耳。
そして……以前の彼女とは別人といっても
過言ではない
――それが別“人”といえるかどうかは置いておいて――顔。
でろんと肥大化した臀部からは、
どこか淫靡な形の尻尾がぶら下がり、
その誕生を誇るかのようにゆらゆらと蠢き出す。

もはや、明らかに少女の――人間のそれとは
異なる存在にミカを作り変えると、
ペンダントの光はゆっくりと消えていった。

後には、あのタグに描かれていたキャラクターと瓜二つの、
不恰好で滑稽な半裸のモンスターが一匹、
取り残されているばかり。
誰も、何も声を出せない、凍りついたような沈黙。
おそるおそるそれをやぶったのは、
かつてミカだったその生物だった。

「あ、あだじ……どうなっだの……?」

思わず口を押さえる。

「ご、ごえ……が! ががみ! ががみっ!!」

トイレに向かって走っていく彼女の後ろ姿を、
その尻尾を眺めながら、
男たちはゆっくりと後ずさりしていた。

「ど……どうするんだよ、ケンジ」
「し、知らねえよ、俺のせいじゃねえ」
「お、お前の彼女だろ?」
「バカ言うな、ただのセフレだよ。
ていうかあんな化け物、もうセフレですらねえし」
「じゃあ……どうすんだよ」

その時、トイレの奥から凄まじい絶叫が聞こえてきた。

「い……いぎゃああああああああッ!!
ごれ……ごれが……あだじ?
うぞっ! うぞッ! うぞだぁあああああーッ!!!」

その、醜く恐怖に満ちた叫び声は、
すでに腰の砕けきっていた男たちの、
最後の糸を絶ち切るのに十分な力を持っていた。
彼らは――逃げた。
恐るべきアクシデントに見舞われたミカを置き去りにして
――そして、2度と戻りはしなかった。

緑背南小学校。
いつのころからか、その廃墟にあらわれる
怪物の噂がささやかれはじめた。
恐ろしく、醜く、哀しげに涙を流すそのモンスター。
“アダジミガ”というそいつの鳴き声が、
自分の正体を知って欲しいと願う必死の自己主張、
「あたし、ミカ」であると気付いた者は、
誰もいなかったという。

green2


   ×   ×   ×

というわけで、おしまいです。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

「ちょwwwお気に入りの絵ってコレかよwww」と思った方。
そうなんです。
どうもすいません。

しかしこんな何だか分かんないモンスターTFで
萌えられる人って、どの位いるんだろうなあ。

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コメント

  1. 雷鳴 | URL | 4bzMwdF2

    Re: 『アダジミガ』 後編

    緑の人型の怪物…そう聞いて○ュレックや
    ハ○クを思い浮かべたのは私だけ?\(・ω・;)ノ

    自分はこういう怪物化もイケます、てか
    基本的に状態異変は大体イケますw
    しかし、タイトルの由来には驚きました。
    最初は「アダジミガ?何かの漫画のキャラかしら」と
    勝手に勘違いしてググっちゃいましたが
    声が変わり、上手く言葉が発音できなくなり
    アタシミカ→アダジミガになったのは実に意外でした…。
    greenbackさんのセンスに脱帽。

  2. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『アダジミガ』 後編

    >雷鳴さん
    コメントありがとうございます。
    その辺の緑色さんのイメージも入ってるかもしれません。
    ていうかフィ○ナ姫の設定は神ですね。

    タイトルに関してはバレバレかと思ってたので
    そう言っていただけると助かります。

  3. カギヤッコ | URL | /k8K4ErU

    Re: 『アダジミガ』 後編

     遅ればせながら感想をば。
     こちらもタイトルでピンとはきましたけど、確かに不条理感が怖さを感じます。

     このアイテムを揃える事と……はもしかすると「やってはいけない」と言う意味で言っていたのか(前の豚スーツも協力者がいれば脱げたかも)、あるいはやはりそうさせる為のものだったのか。
     どちらにしろ恐ろしさは強い訳で。

     こちら流としては何らかの手順で脱げれば……とは思いますけどその道も険しそうで。
     とにもかくにも戦慄の一品、見事です。

  4. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『アダジミガ』 後編

    >カギヤッコさん
    コメントありがとうございます。

    不条理……ですよね、たしかに。
    何にも悪いことしてないのに「いなかったという」じゃねーよ、と
    我ながら思いますw

    おっしゃる通り、一応じーさんは「やってはいけない」的な意味で
    注意はしたんじゃないかと。
    それでも悪ノリして買っていくバカを積極的に止めるほど
    お人好しでもない、というイメージですかね。

    いずれにしても一枚絵からむりやり捻り出したお話なので
    いつになくムチャな、悲惨な感じになってしまいました。
    できるもんなら戻してあげたいんですが……^^;

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