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EDMOLさんから頂いてしまいました☆

2008年08月12日 08:42

夏の頂き物シリーズ第一弾!
あのEDMOL LIFEのEDMOLさんから、
夏にぴったりのTF絵を頂いてしまいました。

画力に関しては相変わらずの神がかりですが、
このモチーフを描いてくださる日が来るとは……

感動のあまり、またしてもSSを付けてしまいました。
ちっとも涼しげじゃないお話になってますw
×   ×   ×

『半身浴のススメ』 前編

「よんじゅっしち、よんじゅっはち、よんじゅう……く、ごじゅっ!!」

ぜい、ぜいと荒い息が口から漏れる。
ひっくり返って天井を眺めながら、
BGMに使っているテクノユニットの歌声にしばし身をまかす。
腹筋をはじめて3ヶ月。
はじめは10回やるのがやっとだったけど、
ずいぶん進歩したものだ。

汗をすってじっとり濡れたTシャツを洗濯機に放りこんで、
脱衣所の鏡と向かいあう。
腰まわりはそれなりにすっきりした気がするし、
お通じが良くなる、なんて思いがけないボーナスもついてきた。

――ぜったい3日坊主になるって、お姉ちゃんのことだから――

「ふふ」

妹にバカにされながらも続けた甲斐があったというものだ。
そりゃ、がんばるさ。
なんたって、トシオが帰ってくるんだもん。
ちょっとでもキレイな私になっていたいじゃない?

「あはぁー……」

バスタブにはぬるめのお湯を3分の1くらい。
おへそが隠れるくらいの位置に水面が来るようにして身体を浸し、
静かに目を閉じる。
これで、30分。
トシオの顔とお風呂上りの冷たいポカリを思い浮かべながら、
ひたすらに時間が過ぎるのを待つ。
じんわりにじむ程度だった汗が次第に勢いを増し、
筋を作って流れ落ちていく。

トシオが東京に転勤になる、という話を
はじめて聞いたのは2年前。
本当に目の前が真っ暗になったのを覚えている。
無茶な決定を押し付けてきた会社にも腹が立ったけど、
何より泣いたりわめいたりしてでも
引き止めることができない自分のプライドが、
恨めしくてならなかった。

遠距離恋愛なんて……今どき、
安っぽいドラマにも出てこないじゃない。
なんで私が。
なんでトシオが。
すっかり凹んでいた私を元気付けてくれたのは、
意外にも妹だった。

――トシオさん、新宿だっけ?
大丈夫、あたし大学近いから。
浮気とかしないように、見張っててあげるよ。
安心しなって、お姉ちゃん。

正直、『浮気とか』の心配をしてたわけじゃないんだけど。
それでも、無責任に明るく笑うその態度に、
はげまされたのは確かだった。

それから、2年。
トシオとはほとんど毎日連絡をとっていたけど、
時おり妹からもメールが送られてきていた。

――女っけゼロ! ご安心あれヽ(∂o∂)丿イヤッホー

添付されている写真には、困ったような顔で笑うトシオの姿。
彼が自分のメールに写真を添付するようなことはないから、
これは貴重だった。
お、元気そうにしてるじゃん。
髪きったんだ、はは、似合ってないな――……

こうして、季節が巡っていった。
もちろん、淋しくないわけじゃない。
でも、耐えられないわけでもない。
頑張れる。
そう、私は、ひとりじゃないんだから。

「ごめんお姉、歯ブラシ置きっぱだった」

回想にふけっていた私の意識を、
一瞬、現実に引き戻したのは妹の声だった。
そう、ちょうど帰ってきてるのだ。
学生の休暇は長い。
曲がりなりにも社会人として働いている私からすれば、
うらやましい限りだ。

――かたん。

「邪魔したね、ごゆっくりー」

なかば熱で浮かされたようになっている私をよそに、
風呂場を飛び出していく妹。
後にはシトラスの香りが残された。
香水でも、つけているのかな。
どちらかといえば引っ込み思案な私と違い、
彼女は奔放で行動的なタイプだ。
性格の違いから、小さい頃は喧嘩も多かった。
――というか、姉妹なんてどこもそんなものなのかな。
うるさくて、わがままで、そのくせ私より要領がよくて……そう、
私は妹のことが、うらやましかったのかもしれない。

大きくなって、別に暮らすようになって、
場所的にも精神的にも距離ができて、
ようやく冷静に分析できるようになった。
そして思う。

ありがとう、と。

トシオがふたたびこの土地に戻ってくる、という報せを
持ってきてくれた彼女。
それをわがことのように喜んでくれた彼女。
私はこの子の姉で、良かったのだと、そう思う。

――ピピピピピッ――

仕掛けておいたアラームが鳴りはじめる。
時間だ。
なんだか風呂の熱気に当てられて、ずいぶん恥ずかしいことを
考えていたみたいな気がするけど、まあいいや。
お風呂は終わりだ。
待ちに待った、ポカリの時間だ!
ばたばたと音を立てて、
妹がアラームを止めにかかっているのが聞こえてくる。

――いいよ、ほっとけばすぐ止まるから。

そう、言ったつもりだった。
だが、口から発せられた声は言葉をつむぐことなく――
それどころか、妙にくぐもった、かすれたような音でしかなかった。

――あ、あれ?

もう一度、声を出してみる。
やはり、低く割れたような、これはまるで――鳴き声?
カバカしい、とは思いながらも、
胸がこんなにドキドキするのは何故だろう。
あれだけ流したと思った汗が、
再び噴き出してくるのは何故だろう。
閉じていた目をあける――それだけのことが、
こんなに恐ろしいのは何故だろう。

お湯を足したわけでもないのに、
水位がこんなに上がっているのもおかしい。
こんなのって、ありえない。
そう――私の体積が増えたりしないかぎり。

ばくばくと心臓が早鐘をうちはじめる。
自分の下らない妄想が、暴走をはじめているのが分かる。
落ち着いて。落ち着いて。落ち着いて。
こういうときは大きく深呼吸。
吸って、吐いて。もういちど吸って、吐いて。
そう、落ち着け私。
目を開ける、それだけのことじゃないか。
全ては、長湯にのぼせきった私の頭が生み出した
空想の産物にすぎない。

いいかな? 開けるよ?
さん、にい、いち……

――なにこれ。

edmolthanks

   ×   ×   ×

いや、なかなか描けないですよ、こんな構図。
そして被害者の女の子がほんとに可愛いんだよなあ……
まさに技術の有効活用。

というわけで後編に続きます。

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