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『涙目王女』 その17

2008年12月12日 00:49

いつものように某所某スレを見てたら、
TF的嗜好の分類についての話題が出てました。

「S」と「M」っていう分け方はなんとなく以前から
自分の中にもあったんだけど、
「開放」と「縛り」っていうベクトルを導入してた人がいて、
これはちょっと面白かった。

人間という窮屈な存在から
より強いもの、より可愛いもの、より自由なものへと
昇華する変身が「開放」で、
あくまで人間の価値観の中で
よりヒエラルキーの低いものへと堕ちて行くのが「縛り」、と。
そのように解釈したんだけど勘違いだったらごめんなさい。

自分がどこに属してるとか意識しすぎると
書いたり描いたりする人的には
必ずしも良くないのかもしれないんだけど、
なんか分類とか分析とかって楽しいんですよねw

……そんな枕とは何ら関係ないまま、本編。
えらいことになっておりますw

今北さん用あらすじ
・魔法で借りてた「美しさ」をムリヤリ一括返済させられた姫!
・なんか変身したらしい。
・王子様に化け物呼ばわりされてるけど……今どうなってるの?

最初から読む人は→1話

   ×   ×   ×

「わあっ、わあっ、わあっ、く、来るな、化け物お!」
小さな子供のように両手を振り回しながら、
レオナルド王子は後ずさって行きます。

「?」

姫は、その言葉の意味がまるで分からず、
いっそう混乱を深めました。
しかし、数秒の後、凄い勢いで鏡に向かって向き直り
……そして、そのまま凍りついたように
動かなくなってしまいました。
無理もありません。
そこにうつっていたのは、
彼女本来の美しく魅力あふれる姿とは――
いえ、それどころかイヤリングに美しさを吸収されて、
さえなくなった容姿とすら、
全く別のものだったのですから。

彼女の均整の取れたプロポーションは見る影もなく破壊され、
分厚い脂肪と硬く濃い体毛で覆い尽くされていました。
膨張した身体を包みきれなくなったウエディングドレスは
もはやその役目を放棄し、彼女の脂肪の隙間に
白い布の破片としてはさまっているだけの
存在に成り下がっています。

小振りながら形の整っていたバストは
Fカップを優に越えるサイズに拡張され、
その重さに耐え切れないまま太鼓腹の上に垂れ下がっています。
乳首もまたそれにふさわしい――いえ、
それ以上のサイズに拡がり、紫がかった気味の悪い色と、
ブツブツした疣に覆われています。
隠すものを失ったそれらはただむき出しのまま、
謁見の間に集う人々の目にさらされ続けていました。

巨大な、ただそれだけで目を背けたくなるような腹は丸く膨張し、
縦に美しい切れ込みとして存在していたおへそは
ぽっこりとした出臍になっています。
それだけではなく、いまや姫は本来の乳房のほかに
数組のふくらみと、乳首を持っていました。
人間の女には通常、有り得ない……そう、
獣のような乳房が付いていたのでした。

腕は丸太のように太くなり、
どう見ても骨格から変形したとしか思えない、
異様な広さと厚みを誇る肩からずんぐりと伸びています。

横に大きく広がった骨盤は、圧倒的な量の脂肪を蓄え、
丸々とした巨大な臀部と、文字通りの太ももを形作っています。
今や100キロを優に超えるであろうリヴェラ姫の体重を
支えるためなのでしょうか、すらりとしていた脚は
逞しい筋肉に覆われ、その上をやはり脂肪がカバーしています。
かわりにと言うのも妙ですが、
その長さは見事に失われ、以前よりも短足になっているのは
誰の目にも明らかでした。
身長がさほど変わったとも思えませんから、
これは恐らくその分、胴が伸びたということになるのでしょう。

手には、指と呼べるようなものはありません。
それに取って代わるように、ごつごつとした無骨な塊……
ひづめがその存在を主張しています。

しかし何より姫の心を打ちのめしたのは、
彼女自身の新しい顔でした。

両耳はとがり、伸び、
面積を増して彼女の髪の中から飛び出しています。
その時彼女によくよく確認する余裕さえあれば、
耳たぶのふちからごわごわとした
剛毛が生えているのにも気づいたでしょう。
すらりと通っていた鼻筋は異様にふくらみ、
前方に大きく付きだしています。
その結果として、大きく拡がった鼻腔は真正面にさらけ出され、
彼女の呼吸のたびにひくひくと動きながら、
汗とも鼻水とも付かぬ液体に濡れてにぶく光っていました。
左右に大きく引き伸ばされた口元からは
薄茶色に汚れた犬歯…いえ、
もはや「牙」と呼んで差し支えの無い、
エナメル質の突起が姿を覗かせています。
張り出した頬骨の下にはだらしなく膨張した頬が垂れ下がり、
そのまま二重あごを擁する
豊満な顔の輪郭を作り出していました。

全てが大きく肥大しているかのような彼女の顔の中で
ただひとつの例外、それは彼女の両眼でした。
それはそれは大きく、二重まぶたと豊かなまつ毛に彩られて
リヴェラ姫のゴージャスな印象を支えていた大きな瞳は、
落ち窪んだ眼窩の奥で小さくちぢこまり、
驚愕の色をたたえながら鏡となった窓の向こうから
彼女自身を見つめ返していたのです。

それはまさに、「化け物」という呼び方にふさわしい、
限りなく醜悪な姿……
そう、一匹の、雌のオークの姿でした。

これが……私?

「ブゴ…ブフぅ?」

え、あれっ……

「ブ、ブヒぃっ……」

思わず口から漏れたその声まで、
もはや人間のものではありません。
また、本来そこに宿るはずの言葉そのものが、
一切の意味を放棄してしまっていたのです。
現実感を失って幻につつまれていた『恐怖』が、
ゆっくりと戻ってきます。

……私はリヴェラ。
……この国の第一王女。
……近隣国にまで名を轟かせる、類まれなる、美貌の持ち主。
……美貌の、美貌の、美貌ノ、ビボウノ……
ドコガ?

鏡の中の怪物は、彼女を見つめ続けています。
その眼を背けたくなるような身体の全てが、
今や彼女のものなのです。
どこに美貌があるというのでしょう?
肥大した全身が、がくがくと震えだします。
苦痛にもだえていた時に流した汗とは違う、
冷や汗が額ににじんで……

いやっ、いやあぁああぁぁあ――――っ!!

「ガぶっ、ブぎヒいいいぃぃい――――っ!!」

その絶叫は、謁見の間に長く、大きく響き渡りました。
あまりに動物じみたその声を合図に、
近衛兵たちがようやく自らの職務を思い出します。
彼らがもはや疑う余地のない『偽者の姫』をいっせいに取り囲み、
捕縛するまでにそう長い時間はかかりませんでした。
『そいつ』が、魔物にしてはあっけないほど
――まるで『本当の姫のように』非力であったことに、
深い意味を見出したものは誰もいませんでした。


かくして、この上ない晴れの日に
シュレアル王国を襲ったこの上ない珍事は無事、解決。
『姫になりすましていた雌オーク』は捕らえられ、
城の地下牢に入れられました。
魔物は涙を流しながら、必死に何かを叫んでいましたが……
いかんせん、どう聞いても豚の鳴き声。
そこに何かしらのメッセージがこめられていたとしても、
誰に伝わろうはずもありませんでした。


   ×   ×   ×

なんだかこれで終わりでいいような気もしますが、
まだ続いたりして。

さしあたり、次回は多分絵を描きます。多分。


描いた絵を見る
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コメント

  1. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『涙目王女』 その17

    来たぜ、来たぜ、オーク化だぁぁぁ!!!!!

    個人的に獣化系でもブタ系にするのが大好きなので、今回はかなりテンション上がりましたw

    俺も、これくらいのテンションを与えれるようなものかきあげたい……

    次回の話、そして絵、期待してますw

  2. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』 その17

    >現在楽識さん
    熱いコメントをありがとうございますw
    書き手さんのモチベーションに貢献できるって言うのは
    ほんとに嬉しいことです。
    期待に沿えるレベルかどうかアレですが、
    絵のほうもご覧ください。

  3. ゴゴT。 | URL | 4.hvYJOA

    Re: 『涙目王女』 その17

    お久しぶりです…と言っても年末年始のごたごたでまたしばらく空きそうですが。
    高クォリティで更新を続けられてるgreenback様には頭の下がる思いですー。

    TF的嗜好のお話に関しては私はやはりM寄りですかね。
    ただヒエラルキー低下型ではあるのですが、
    被害者はともかく、加害者や作者から見ると
    可愛い仔にしてあげてるつもりなんですけどねーw
    こういう場合はどういう分類になるのやらw

    美しさの返済分だけでなく、
    物語的に今まで溜めに溜めた伏線も一気にハジけた感じで、
    TF作品的には来るべき時が来た!という一種の爽快感すら感じますw
    うわーなんてムゴいんだーあまりの不幸が降りかかる姫様が可哀想過ぎて見ていられないー(棒読み)

  4. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』 その17

    >ゴゴT。さん
    わー、ようこそいらっしゃいましたー。

    題材が題材なので、正直、ゴゴT。さんの感想を頂くのが
    楽しみな反面、怖かったりもして
    なんかひとりでドキドキしてたんですが、
    ひとまず喜んでいただけてるみたいなのでほっとしましたw

    分類の話は、踏み込んでいくと知識と考察の浅さを
    露呈することになりそうなので自重しますが、
    おっしゃってることはすごく良く分かります。
    …あああ、やっぱり馬鹿みたいな返ししかできないorz

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