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『涙目王女』その19

2008年12月25日 00:14

メリークリスマス。

みなさま、よき聖夜をお過ごしでしょうか。
そんな方も、そうでもない方も、ようこそおいで下さいました。
へんなかがみは今夜も営業しております。
気の利いたトナカイTFとか、用意できたら良かったんですけど、
無いです。
ので、相も変わらず豚小説をお送りします。

今北さん用あらすじ
・オークにされて、地下牢にとじこめられたお姫様。
・文字通りのどん底。
・そこに、彼女のすべてを奪った魔女が登場!

はじめから読んでみようという方は→1話からどうぞ。

   ×   ×   ×

「ふご、ふごゴっ! ぶぎぃ! ぶひいっ!」
「あはは、ほんとに何ていってるのか分かんないですね。
まあ、どうでもいいや。
実は、ちょっとしたお願いがありまして」
「ブヒッ?」
「今日の婚礼でね、たくさんご馳走が出たんですよ。
ホントに馬鹿じゃないかってくらい、
あれだけ集まった皆さんでも食べきれないくらいの量が。
まあ、万一足りないともなれば
王家の威厳に関わったりするのかもしれないけど、
それでもアレは多すぎましたね。
……いっぱい、あまっちゃったんですよ」

ぴくん、と姫のとがった耳が動きました。

「あはっ、何が言いたいか分かります?」

――ぎゅうううう。
その言葉に応えるかのように、姫のおなかが音を立てました。

「ブごッ!」

あわてて押さえますが、何の意味もありません。
そう、午前中にとらわれてから12時間あまり、
姫は一切の食物を与えられていませんでした。
もちろん彼女自身の精神状態がそれどころではなかったため、
意識にはのぼらなかったものの……
そう。
確かに彼女は、飢えていました。
一度自覚してしまうと、もうおさえはききません。

――ぎゅうううううう。

「あははっ、そりゃあそうですよね、
ブタさんなんだからたくさん食べないと」

嬉しそうに笑って、フリーダの手が奇妙な印を描きます。

――ぽん。

音を立てて、大量の食物が牢の中に出現しました。
……いえ、それを『食物』と呼ぶのは、
普通の感覚を持つ人間なら
いささか気後れしてしまうかもしれません。

大量の野菜屑や肉片のこびりついた骨、
かつてはケーキだったであろうぐちゃぐちゃの塊……
残り物のスープや牛乳に浸って何倍にも膨らみ、
てらてらと光っているそれらは、
はっきり『残飯』と言ってしかるべきものでした。
今日の婚礼にもちいられた料理のなれのはてであるという
フリーダの言葉のとおり、
まだ腐敗はしていないようでしたが……
以前の姫であれば、見ただけで
吐き気をもよおしていたかもしれません。

そう、以前の姫ならば。
今の姫にとって、
それらが人の――少なくとも王族の――口にするものと
遠くかけ離れていることを十分に認識してなお、
それらは『食物』以外のなにものでもありませんでした。
数十種類の食物が混じりあい、
ほんのりと発酵しかけたそれらの匂いが、
肥大した姫の鼻から容赦なく入ってきます。
信じられない量のよだれが、口の端からあふれ出てきます。

――おなかすいた。
たべたい。
食べたい食べたいたべたいっ!

「どうぞ、思う存分召し上がってくださいな」

頭の隅で、かすかに残ったプライドが悲鳴をあげました。
しかしそれを認識した時、
すでに姫は残飯に噛り付いていました。
リンゴの芯や魚の頭、何か動物の内臓……
牢獄に這いずり回っていたゴキブリが
狂喜してむらがりはじめたそれらの『食物』を、
恐るべき勢いで平らげていきます。
彼女自身が今日まで想像もしていなかった、
手づかみでの食事。
がつがつ、ぴちゃぴちゃと音を立てて噛み砕き、
すすりこむその一口、一口が美味しくて、
こんなものを美味しいと思っている自分が情けなくて……
いつしか姫は、涙を流していました。

「あらぁ、そんなに喜んでもらえるなんて……
来た甲斐がありましたわ……って、
あは、聞いてないかな?
あわてなくても大丈夫、誰もとったりしませんよ、そんな生ゴミ。
あははははっ!」

フリーダの言葉に潜んだトゲが、リヴェラ姫の心をひっかきます。
食べものに夢中になりながらも、姫の巨大化した耳は
魔女の嘲笑をはっきりととらえていました。
でも、どうすることもできません。
だって、こんなにお腹が空くんだもの。
こんなに良い匂いが、次から次に香ってくるんだもの。
こんなに……ぜんぶ、美味しいんだもの。

「かまいませんよ、そのまま召しあがっててください」

姫の心の声に答えるように、魔女は優しく微笑みます。

「私に気兼ねなんてすることないんですから。
あ、あと、
そんなに、行儀よくしなくていいんですよ」

……え?
今なんて?
『行儀よく』って言った?

牢屋の中で地面に盛られた生ゴミの山に、
手づかみでむしゃぶりついているのです。
これ以上の行儀の悪い食事があるのでしょうか?
――自問しながら、同時に姫は気づいていました。
さっきからそうしたいのに、
それこそフリーダの前だから我慢していた「それ」に。
自分から全てを奪った女の前で「それ」をやるのは
あんまりにも惨めだから。
だから、フリーダに「許可」されたからって、
「そんなこと」できるはずないのですが……

でも。

   ×   ×   ×

20話へ

そのひとクチがブタのもとそのひとクチがブタのもと
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コメント

  1. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『涙目王女』その19

    あはは、壊れたw壊れてるw

    お姫様が超完全に豚に成り下がり始めましたねw

    個人的にはここからもっと惨めで肥えた豚になって欲しいですが、でも、どうなるんでしょうかw

    こちらの予想では、手をつかわ……ゴフォンゴフォンですかね?

  2. ゴゴT。 | URL | Xj9pzKFI

    Re: 『涙目王女』その19

    豚や牛が好きな割に、蝿や黒虫Gなどの虫は苦手な私は
    酪農家には成れそうもありませんねー。
    でも演出としてはなかなかショッキングで効果的。

    少し前に某スレの話題にも出てましたが、私はどちらかというと、
    家畜化しても最低限は衛生的に行きたい甘ちゃんなんで
    こういうハードなプレイは師匠におまかせしますw
    ただ、自分では書けないけど、読者としてはこの虐めっぷりもかなり好きですが!

    まぁ清潔は清潔でも、敢えてサイズの合わない服を着せて羞恥を煽ったり
    ヒヅメなのにフォークやナイフの使用を強要して、こぼす度に叱責や言葉責め、とか…
    被害者が可哀想なのには変わりないですがw

  3. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』その19

    >現在楽識さん
    だいたいあってるw
    もうちょっとイベントは用意してありますが、
    ここから後は身体というより精神で遊ぶ感じになるかとw

    >ゴゴT。さん
    こっちの趣味って、何がハードで何が甘いのか分かんないですよねw
    フォークやナイフの強要は素敵だなあ。
    強要しないで、置いとくだけでもいいかもしんない。
    それで、耐え切れずに手づかみでがっついちゃったら、
    ニヤニヤしながら
    「ああ、ごめんね、まだ人間扱いしちゃってw」とか。

    あと、師匠呼ばわりはホント勘弁してください><
    それこそなんて羞恥プレイwww

    >12/25 22:17拍手コメントの方
    ありがとうございます。
    フリーフォールwww
    さらに落下を続ける姫のことを、どうか見守ってやって下さい。

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