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『涙目王女』 その28

2009年02月11日 00:15

ちんたら続いてきたこのお話も、
これにて最終回となります。

今北さん用あらすじ
・むかしむかしあるところに、豚にされたお姫様がいました。
・元に戻るチャンスを逃し、気付けばそこはモンスターの闘技場。
・あとは、分かるね。

初めから読むなら→1話へどうぞ

   ×   ×   ×

じり、じりとトロルは距離をつめてきています。
とん、と背中が石造りの壁にぶつかって、姫は我に帰りました。
そうです。
必死で頭を働かせている間に、
姫は逃れようのない闘技場の隅にまで
追いつめられてしまっていたのです。

――ああ。
考えるだけ無駄なんだ。
こんな化け物相手に、何の抵抗ができる?
あの、屈強な二の腕。
私なんか、簡単に押さえつけられてしまう。
だから、仕方ない。
もう、何をどうされたって、仕方ない。
それは私にはどうすることもできないことなのだから……!

極限状態の中で格好の「言い訳」を見つけ出したリヴェラ姫は、
無意識に四つんばいになっていました。
ひくひくと蠢く性器をトロルに差し出す彼女の姿は、
誰がどう見ても、交尾を乞うブタ以外の何者でもありません。
巨人はドラゴンを失神させたその巨大な手で、
姫の腰をつかみました。

「!」

極限まで敏感になっていた彼女の身体は、
それだけで快感に震えます。
そのまま、熱いものが股間に触れて……
ぴくん、と尻尾の先が動きました。
電撃にも似た快感が、姫の身体を貫きます。
真っ白に飛びそうになる思考を現実につなぎとめるのは、
さらなる快感。
驚くべき質量の肉の棒が、ゆっくりと身体の中に入ってきます。
そしてそれを、裂けることもなく受け止める彼女の器。
驚愕と嫌悪がないまぜになっても、口から出るのは甘く
切ない獣の声ばかり。

「んブッ、んブッ、んブヒィいッ……!」

トロルはその大きな顔に下卑た笑みを浮かべ、
悠々と腰をふりはじめます。
歯をくいしばって、
悦楽の波に飲み込まれるのをこらえている姫の表情も、
客観的に見ればその旺盛な獣欲に身をまかせている
雌オークの顔に過ぎませんでした。
いまや趣向を理解した観客たちのボルテージは高まる一方。

「いいぞーっ! やれやれー!」
「お似合いだぜお2人さん」
「いやーあ、アレ見てると
うちのカカアでもいい女だって思えてくるぜ」
「しかし見苦しいもんだねえ、雌のオークってのは」
「ちげえねえ、臭えしな、ぎゃははは」

酒の入った男たちの野次が、姫の広がりきった耳に響きます。
あまりに正直でストレートなその言葉の数々。
それらのひとつひとつにずたずたに切り裂かれる心の痛みが、
皮肉にも彼女の冷静な思考を取り戻しました。

こんなの、ダメだ。
イヤだ。
誰か、誰かいないの?
これだけ人がいて、どうして誰も助けてくれないの?
指差して笑ってないで、助けてよ!
口笛なんて吹かないで!
ブタって……言わないで……
ねえ、気づいて!
気付いて!
誰でもいいから、私に気付いてよおっ!
私は、私は、私はぁあああああああああああああああっ!

「ご声援ありがとうございます!
おかげでメス豚ちゃん、ずいぶんノってきたみたい。
よがり声がうるさいったらないですね。
それに、ご覧ください皆さん、
この淫乱豚、自分から腰を振りはじめましたよ!」
「!?」

フリーダの場内アナウンスに指摘されて、
はじめて姫はそれに気付きました。
トロルの腰の動きに応えるように。
もっと深く、もっと奥まで入るように。
もっと、もっと気持ちよくなれるように。
自らが淫らに腰を動かしていたことに。
冷や水を浴びせられたように、
その事実は彼女を打ちのめしました。
いえ、もっと恐ろしいことに、
自覚してなお、それを止めることができないのです。
魔女に、観客達に、下手をすると
自分を犯しているトロルにまで嘲笑われながら、
この上なく恥ずかしく、みじめに思いながら、
それでもなお、自分の身体が言うことを聞いてくれないのです。
艶っぽさを増していく、自分の声が抑えられないのです。
――ただ気持ちいいという、それだけのことで。

それが、今の姫。

雌のオークとしての本能が、彼女を完全に支配していました。
あるいはいっそ、それに全精神をまかせることができたなら、
あるいはまだ幸せだったのかもしれません。
しかし、姫の頭の片隅には残酷なまでにクリアな部分が居座り、
かつての美しい自分の姿が
記憶から消え去ることもありませんでした。

自我と本能。
混じりあいながらも溶け合うことの無いふたつの要素に
弄ばれている姫の心が、魔女には手に取るように分かりました。
うっとりとため息を漏らし、
こみあげてくる黒い歓びを感じながらつぶやきます。

「なんて可愛いんでしょう……姫」

実況席という、この上ない特等席から、
魔女は姫の痴態を鑑賞していました。
そこにいるのは舌をだらりと垂らし、
涙とよだれで濡れた顔面を闘技場の土で真っ黒にしながらも、
さらなる快感を求めて切なく鳴き声を上げ続ける豚の怪物。
醜く、あさましく、哀れでいながら
生命力に満ちあふれたその様子を、
フリーダは心の底から美しいと思いました。

――リヴェラ姫、あなたは誰にも渡さない。
ずっと私と一緒にいるんです。
このフリーダの持てるありったけの愛情を注いで、
一生をかけて極上の恥辱と絶望を味わわせ続けてさしあげます。
きっと、楽しいはず。
今までどんな人間も、
どんな獣も、
どんな魔族だって味わったことのない、本当のどん底。
私たちふたり手を携えて、
どこまでもどこまでも、下っていきましょうね――

かくして、シュレアルのモンスター格闘場に、
ひとつの名物が生まれました。
「ごほうびタイム」と名づけられたその公開獣姦ショーは、
格闘場に新たなファン層を呼び込み、
その収益を数倍に跳ね上げたといいます。
最終試合の後、その勝者に股をひらく奇妙な雌オークは、
その醜さと浅ましさの中に見え隠れする何ともいえない表情で、
観客達を魅了し続けました。
脂汗とよだれと愛液をしたたらせながら、
あらゆるモンスターとつがう豚の化け物。
その悲鳴の中に込められた、
助けをもとめる哀願の意味を理解できるものは誰もいません。
分厚い脂肪とマズルの奥深くに隠された、
かつての美貌を推し量ることができるものは、誰もいません。
今日も絶望の底で絶頂を迎えた彼女にできることといえば、
場内をふるわせんばかりの声で絶叫することだけ。
――高く、甘く、せつなく。

「ッんぶきぃいイいいいいいいいい――ッ!!!!」


おしまい。


   ×   ×   ×

こんなだらだらしたお話に
辛抱づよくお付き合いくださった皆さんに、
心より御礼申しあげます。

本当にありがとうございました!

……で、イラストは結局間に合わないという
この体たらくですよ。
近日中に、必ず。
すみませんすみません。

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戸川純

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コメント

  1. | URL | -

    全部読ませてもらいました。
    とても面白く、ワクワクしながら読みました。

    ボソッと一言
    その内凄い子供が生まれそうw

  2. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『涙目王女』 その28

    お疲れ様でしたw

    1年後ぐらいに沢山子供はらんでいても交尾しちゃう姫様とか妄想しちゃいそうですw

  3. K | URL | -

    Re: 『涙目王女』 その28

    お久しぶりです。
    涙目王女、最後まで読ませて頂きました。
    あの美人な姫が醜いモンスターになってしまうとは、greenbackさんらしさが出ていてとても良かったです。
    次回も期待しています。

  4. clown | URL | ZFmvtyx6

    Re: 『涙目王女』 その28

    お疲れ様です。最高に楽しませて頂きました。
    今ある羞恥系のTF小説の内、一つの到達点に思えます。

    リヴェラ姫、フリーダ、そしてgreenbackさんに盛大な拍手を送りたいです。

  5. 雷鳴 | URL | 8x/lEzVM

    Re: 『涙目王女』 その28

    姫という立場から、オークという醜い下等種族へと
    みるみる堕ちていくリヴェラ姫の転落劇。
    元々「貴族」という高貴な立場だったからこそ、
    獣になった時のギャップに拍車が掛かり、とても
    興奮させられました。1つ1つのシーンや
    心理の描写も、greenbackさん独特の細かさと
    雰囲気に飲み込まれて、展開は、ずっと
    wktkの連続でした。

    長期連載、本当にお疲れ様でした。

  6. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』 その28

    つД`)・゚・。・゚゚・*:.。

    温かいお言葉の数々、ほんとに痛み入ります。

    >02月11日 01:33コメントの方
    ありがとうございます。
    子供は……どうなりますかねえ。
    お母さんになっちゃうと最終的に『いい話』にしてしまいそうで、
    そこまでは書けませんでした。

    >Kさん
    ありがとうございます。
    私らしいというか、かわりばえがしないというかw
    なにげに『美人の姫』って言っていただけて幸いです。
    どうにも変身前の絵に手こずったものでw

    >clownさん
    ありがとうございます。
    リヴェラ姫にも拍手をいただけて、ちょっと感激。
    『Mとしての才能を持ちながら(そして発揮しながら)、
    最後までそれを自覚しない』という、ある種フリーダさん以上の
    チートキャラになってしまいましたが、つまりこういう人が
    私のミューズなんだなあと思っていたところなのでw

    >雷鳴さん
    ありがとうございます。
    読み返してみると改めて偏執的な文章だなあと思うのですが、
    それで何かしら伝わるものがあるのならば、
    こんなに嬉しいことはありません。
    少しでもTFの徒が増えるきっかけになったら、
    なお良いんですけど……どうなんだろ。

  7. ゴゴT。 | URL | Xj9pzKFI

    Re: 『涙目王女』 その28

    またも「お久しぶり」になってしまいました。
    遅ればせながら完結おめでとうございます&お疲れ様でした。
    これほどの長期連載というだけでも驚くべきところですが、
    要所要所にTF的な山場があり、毎話ごと次への期待を切らさないまま
    全編通して高い質で纏まっていることに脱帽です。

    リヴェラ姫もこう、なんというか、一つの落とし所(堕とし所?)としては
    TFの被害者的にも加害者的にも理想的な「しあわせ」に落ち着いて
    良かったですねー。ハッピーエンドでw

    たまたま見ていた貴族の令嬢とかが、
    「やだ、あの雌豚、うらやまs……い、いえ、いやらしい……」
    とか思って頬を赤らめそうなほどの幸せっぷりで、
    で、そんな事を思ってた令嬢の枕元に
    その晩フリーダさんが現れたりとかなんとかいう妄想。

    あと地味に、各記事ごとのアマゾン宣伝も良く考えられてて笑いを誘いました。
    ラストは戸川純さんの「好き好き大好き」で締めですかー。
    「ヤンデレ」という言葉が普及した今になって、
    「時代が追いついた」などと言われるようになってw
    「愛してるって言わなきゃ×××!」というくらいの過激な愛を
    姫とフリーダさんのお二方には末永く育んで頂きたいものですw
    良作を本当にありがとうございました!

  8. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』 その28

    >ゴゴT。さん

    丁寧なご感想、どうもありがとうございます。
    ほんとにほんとに嬉しいです。

    フリーダさんにレズっ気を加える予定はなかったはずなんですが、
    気付いたら私ともどもすっかりお姫様にめろめろになっていたという……
    彼女的にも誤算だったんじゃないでしょうか。
    魔王様のシュレアル乗っ取り計画も完全にお留守にしてるっぽいしw

    令嬢のお話、ステキですねえ。
    あーそうだ、楽識さんからの頂き物はやく出さなきゃ……

    戸川純はどこで誰にささるか分かりませんねえ。
    「蛹化の女」の「それは貴方を想い過ぎて変わり果てた私の姿」とか、
    もう歌詞だけで抜けそうだw

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