へんなかがみ : 美化委員

友達が多いなんてレベルじゃなくて、クラスの誰もが彼女に優しい。
先生だってそうだ。

「えーとそれじゃ次の問題、宮原……は睡眠学習中か。じゃあ村越、解いてみろ」

万事がこの調子。ズル休みしたりテストをすっぽかすこともしょっちゅうなのに、内申書とかめちゃめちゃ良いらしいという噂もある。
……不思議、だよねえ？
宮原さん本人はどんなに優しくされてもちっとも嬉しそうじゃないし、見た目だって……いや、悪口言いたいわけじゃないけど、はっきり言って……デブじゃん？
節電でクーラー切ってるからすぐ汗だくになって、ちょっと臭かったりもするのに、なんであんなに好かれてるの？

「あー、あなたは転校してきたばっかりだもんね。知らなくて当然か。ほら宮原さん、美化委員だから」

へ？　美化委員て……掃除をすごい頑張ってるとか？

「ううん、この学校の美化委員はちょっと意味がちがくてさ。クラスじゅうの女の子から余分な脂肪をもらってくれる係なのよ。だからほら、うちの生徒ってほとんどみんなスリムでしょ？」

い、言われてみれば……

「それは美化委員のおかげなの。嫌な仕事を進んで引き受けてくれてるんだもん、学校側だってそれなりに優遇してるってわけ。それを差し引いても偉いよね、どんなにダイエットしても追いつかないから、たった半年であんなにおっきくなっちゃって。去年の写真見る？　びっくりするよ」

うわっ、すっごいスレンダー美少女……これが半年前の宮原さん？

「そうそう。可愛いでしょ？　でも、それがいけなかったのかな。好きでもないサッカー部のキャプテンに告られて、みんなに妬まれちゃってさ。それで美化委員にさせられちゃった」

……え？　それってどういうこと？

「ああ、言ってなかったね。美化委員って、クラスの女子全員の投票で決まるの。半年交代だから、今度のホームルームで選ぶんじゃないかな」

……そ、そうなんだ……

「次は誰になるかなあ……って、もうだいたい目星はついてるんだけどね。今回は宮原さんみたいに分かりやすく恨みを買った人がいない以上、なるべく罪悪感を感じないですむ子が選ばれると思うの」

それって・・え、何その笑顔？

「そう。ずっと一緒に過ごしてきたクラスメートより、馴染みの薄い転校生に引き受けてもらったほうが、なんぼか気が楽だよね」

じ、冗談きついな……ねえ、ちょっと、嘘でしょ？

「大丈夫大丈夫、あっという間に人気者になれるんだから、ラッキーといえばラッキーじゃない？　みんなすっごい優しくしてくれるようになるから、楽しみにしてるといいよ」

そんな、やだよそんなの……
ねえ、待ってよ、お願いだから、ねえってば！

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というわけで久々の肥満化ネタでした。

なんていうかこう「みんなに優しくされること自体が羞恥プレイ」みたいな話を書きたいなあとつねづね思ってるんですが、なかなか難しいもんですね。

赤ちゃんプレイとか、そっち方面にヒントがあるのかなあ。

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