へんなかがみ : 『愛用バトン』

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いらっしゃい、どうぞ上がって。
ごめんなさいね、
ユニフォーム着てきてなんてわがまま言っちゃって。
電車の中とか、へんなひとに見られたりしなかった？

うん、足のほうはもう、だいたい良いんだ。
歩くだけなら全然大丈夫。
ただ……ね。
そう、見ての通り、こんな身体になっちゃったから、
学校行きづらくてさ。
ケガして、大会出られないって分かったら、
もう何もかもイヤになっちゃって……
チアやるために我慢してた反動なのかな。
毎日スナックとか甘いもの、山ほど食べて。
うんざりして、寝て。
起きて、また食べて……気付いたら、あっというまにこんな体型。
あはは、バカだよね、私。
笑ってくれて……いいんだよ？

今日はね、リエにお願いがあって呼んだんだ。
今度の大会であたしのポジションを
代わりにつとめてくれるリエにしか、頼めないこと。
……はい、これ。

そう、私の愛用バトン。

このコ、使ってあげて欲しいんだ。
私は出られなくなっちゃったけど、
一緒に練習してきたこのコだけでも、
晴れ舞台にあげてあげたくて……
ワガママ言ってるのは分かってるんだけど、でも……お願い！

本当？

ありがとう、すごい嬉しい。
リエならきっと聞いてくれると思ったんだ。
頑張ってね。
あなたに託すから。
私のポジションと、私のバトンと、私の想いと、
――私の、体重。




……あ、あは、あははははっ。
リエ、リエ凄いよ！
びっくりした？　ねえびっくりした？　どう、どんな気持ち？
良いよ、言わなくてもイヤってほど知ってるから。
暑いでしょ、気温が上がったわけでもないのに。
息があがるでしょ、別に激しく動いてるわけでもないのに。
あらら、すごいお腹。
せっかくのかわいいスカートも破れちゃったね。
まあいいか、どうせもう着られないんだし。

どうしてって、何が？
考えてみてよ、おかしな話でしょ。
練習の時キャッチに失敗して、
私が大会にでられなくなったのは誰のせい？
リエだよね。
そのリエが私の代わりに大会に出て、みんなの拍手を浴びて、
被害者の私は学校にも行けずに
家でひとり、ブクブク太っていくだけなんて……ねえ、
誰が聞いたって不公平じゃない。
だから、せめて。
私の気持ちをわかってほしくて、今日来てもらったんだ。
愛用のバトンと、贅肉をうけとってほしくて、ね？

先輩として、いいこと教えてあげる。
そうやって泣いてても、
今までと全然まわりのリアクションが違うんだよ。
なんて言ったらいいかな……
そう、セリフの後にまんべんなく（笑）がつく感じ？

「大丈夫？（笑）」
「そんなに泣かないで（笑）」
「元気だしてよ、美味しいものでも食べてさ（笑）」
「ていうか、いつまでも泣いてんじゃねーよ、暑苦しいから（笑）」

……だから、暑苦しいんだってば。
もう涙なんだか汗なんだかよく分かんないし（笑）

ああ、分かってると想うけど、
バトン捨てたって、もう元には戻らないわよ。
あなたはその身体で生きていくの。
これから、ずっとね。
今日は本当にありがとう。
みんなによろしくね、登校する気になれればの話だけど。
大会頑張ってね、出られればの話だけど。

あはは。
あは、あはははははははっ！

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　 |l､{　 　j}　/,,ｨ//｜　　　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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　 |ﾘ u' }　 ,ﾉ　_,!V,ﾊ |　　 　 ＜　今　起こった事を話すぜ！
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　　ヽ iLﾚ 　u' |　| ヾｌﾄﾊ〉. 　　|　そのイラストをUPしていた』
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