2008年10月26日 01:27
もう読んじゃったという方には、改めてお詫びいたします。
ほんとすみませんでした。
今北さん用あらすじ
・おひめさまがいました
・変な商人からもらったイヤリング……。゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!!
・ちょっと妙だけど、王子様ともラブラブなのでまあいいや☆
はじめから読むひとは→1話へ
× × ×
リヴェラ姫の美貌の評判は、城下街に留まらず、国中、
いえ、近隣の国々まで少しずつ広まっていきました。
その多くは姫を一目見て、
それを自慢することを目的にしていました。
誰もが彼女を前にすると感嘆の溜息をもらし、
言葉をつくしてその美しさを誉めそやします。
中にはレオナルド王子のことを知らず、
声高らかに交際を申し出た異国の若き王までいました。
もちろん、角が立たぬようやんわりと断ったのですが、
すごすごと帰ってゆくその姿は
「意気消沈」を絵に描いたようでした。
しかし、その美しい姫の耳元でいつも光っている、
緑色のイヤリングに注目するものはほとんどいませんでした。
牛車商人がその贈り物をしていってから、はや数ヶ月。
姫が人前に姿を見せるときは、
片時もイヤリングをはずしたことはありませんでした。
「しょうがないじゃない、気に入っちゃったんだもの……」
国王夫妻やジオティなど毎日顔を合わせている者が
そのことを指摘すると、
姫は明るく笑ってそう答えます。
その、たとえようもなく美しい笑顔を前にしては、
誰も、それ以上追及することができませんでした。
ときおり入る勇者からの報せも、喜ばしいものばかり。
魔王なにするものぞといったムードの中、
シュレアルにはいっそう平和な日々が続いていました。
ほんの少し、ほんの少しだけ変わったことがあるとすれば、
それは姫の部屋に鍵がついたこと、くらいでしょうか。
パブロが指揮をとる万全の警備体制のもと、
安全面からはまったく必要がないのですが、
姫の強い希望で、丈夫な鍵が取り付けられました。
「私にだって、プライベートがあっていいはずだわ」
なんといってもお年頃の姫の言うことです。
それなりに説得力がありました。
そんなある夜のこと。
姫は、彼女の「プライベート」な寝室で、鏡に向かっていました。
しかし、どうしたことでしょう。
その表情は、
みんなの前に立っている時の明るい笑顔とはうってかわって、
暗くうち沈んでいたのです。
もっとも、たぐいまれな彼女の美貌では
その憂いの表情までが魅力的ではあるのですが……
「はあ……」
重い溜息が、彼女の口から漏れます。
近隣諸国のあらゆる人々に誉めそやされ、
レオナルド王子との交際も順調、向かうところ敵なしの姫が、
なぜこのような溜息をつかなくてはならないのでしょうか。
床に落とした視線をちらりと鏡にむけ、
姫はゆっくりとイヤリングの留め具に手をかけました。
手が震えています。
目を閉じ、息を吸い込んで、
ぱちん、ぱちんと一気にはずしました。
「………っ!」
突然、鏡の前の姫が顔を抑えました。
ぞくぞくと、鳥肌がたっているのが見えます。
ぷつぷつと、汗が額に浮かびます。
「嫌嫌いや嫌…」
小さく呟きながら、首を左右に振ります。
錯覚でしょうか。
姫のシルエットが、なんとなく……緩んできているのは。
顔をおさえている手が、その指が、
先ほどまでにくらべて節くれだってきているのは。
鳥肌の先に、うっすらと体毛が見えているのは。
それが錯覚であって欲しいと誰よりも望んでいるのは、
言うまでもなくリヴェラ姫本人でした。
「ああ……」
ゆっくりと、姫は顔を覆っていた手をはなします。
瞳の端に涙を浮かべた顔が、その下からあらわれました。
しかし……これが、先ほどまでの姫と同じ人物なのでしょうか?
にきびやそばかす、肌荒れなどは可愛いもの。
身体にあわせるように丸みをおびた頬の輪郭もまだいいでしょう。
大きく左右に突き出して前を向いた耳も、
個性的と言えなくはないかもしれません。
しかし、彼女の顔の中心にあって、
どうにも存在を無視できない……その鼻。
赤く見えるのは彼女が強く押さえすぎたせいだとしても、
ひとまわり大きくなって、形もなんだか歪に思えます。
それらの要素をすべて加味した姫の姿は、彼女にとって……
いえ、おそらく大多数の人にとっての「美」の基準から
いささか離れたものと言わざるをえませんでした。
「う……ううっ、ううう……」
最高級の化粧水をぽってりした頬にすりこみながら、
姫は嗚咽をこらえることができませんでした。
どうして?
どうしてこんなことになっちゃったんだろう……
× × ×
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コメント
現在楽識 | URL | OOy8wYYM
Re: 『涙目王女』 その7
……どうなってるんだ!!!!!!
やばい、すごいオチが楽しみだ……
何になっていくのだろう……
絵……変化が見れるのが楽しみですw
( 2008年10月26日 01:52 [編集] )
K | URL | -
Re: 『涙目王女』 その7
ついに変身が始まりましたか・・・
あの可愛いお姫様がどんな醜い姿になるのか楽しみです。
ああ・・わくわくしてきた~
( 2008年10月26日 11:01 [編集] )
greenback | URL | xB9R6Xc2
Re: 『涙目王女』 その7
>現在楽識さん
楽しみにしていただきつつ、今週はちょっとひと休み。
いただいたSS、ようやくUPさせていただけそうです。
>Kさん
ありがとうございます。
最終的にはしっかりえぐいことになる予定ですが、
ゆるゆるお付き合い願えれば幸いです。
( 2008年10月27日 02:31 [編集] )
AT | URL | iBbSDt2Y
Re: 『涙目王女』 その7
いいですねぇ・・・
何がいいってタイトルがいいです!(笑)
タイトルって重要です。
姫の言葉づかいが姫っぽくないのが可愛いです。
はやく姫の涙がみたい!!
でもじっくりやって下さい(笑)
ところで、何で私が読めているのかというと、
何も見えないところを、コピーしてフォントを変換すると
読めるようになるのを発見した次第。
ちょいと面倒だけど(笑)
それではまた!
( 2008年10月30日 21:50 [編集] )
greenback | URL | xB9R6Xc2
Re: 『涙目王女』 その7
>ATさん
おお、書き込みありがとうございます!
こちらで何の対策も打てないでいる間に、
そんな裏技を発見しておられたとは……
なんだかいらぬ手間をおかけしてすみませんです。
タイトル、お気に召しましたか。
個人的にも、ちょっと気に入ってますw
仰せの通り、じっくり行かせて頂きます。
よろしくお願いします。
※『俺は女子高生』、毎回楽しみにしてます!
あっちもじわじわですねえ。
なんか甘酸っぱくて、すごく素敵です。
応援してます!
( 2008年11月02日 08:49 [編集] )
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