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『涙目お嬢様×3』 後編

2009年03月26日 09:12

いよいよ締めくくりの3人目。
かわいい顔して10歳とは思えない悪女っぷりを発揮していた
末娘・シャルの末路とは?

なんか楽識さんの妄想力に私の絵心が追いつかない感じですが
あくまでイラストはオマケってことでご容赦ください。

ここまでのあらすじ
・むかしむかしある所に、美人三姉妹がおりました。
・末娘のところに、不思議な力を持つ”愚者”が降臨。
・彼女の願いにより、姉たちは家畜に変身。そして「仕上げ」へ…

はじめから読む人は→前編へどうぞ。

   ×   ×   ×

その瞬間、シャルの背筋に冷たいものを感じた。
逃げ出さないと……
自分の目の前で姉達の変化をなまじ見てしまうと、
ソレが自分に向けられたと分かると
その恐怖は姉達とは比較にならない。

「な、何をいってらっしゃって……」
『俺は……俺は優しくなくてね、
ソレに俺は悪魔じゃないけど、どんな契約にも代価は必要だろ?
都合はよく出来てないのが世の中さ』

『俺』という言葉を強調しながら
『愚者』は一歩一歩シャルに近寄り、口を歪ませる。

『さて、豚と牛ときたし……君は……』

動けないシャルの頭を軽くつかみ、指を弾く。

「い、いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

シャルの胸が大きくなっていく。
お尻も、人の姿だった頃の姉達に負けず劣らずのサイズまで……
自分の目の前に巨大な胸が広がり、
目を丸くしながら悲鳴を上げてるシャルに
『愚者』はこれから大好物を食べるかのような笑みを向けている。
鏡越しにシャルが自分の姿を見た頃には、
骨がきしみ、体中に痛みが走った。
身長が伸び始め、かわいらしかった体は、
異常なほど巨大な胸とお尻を持った2メートルほどの長身となり、
長い足がスカートからはみ出てしまっている。

『全ての人がひれ伏すか……これで見上げることになるな』

それで……終ってくれれば……と
シャルは必死に心の中で願った。
今なら神様だって……どんな悪魔にだって願ってしまうだろう。
体から力が抜けると共に
全身で感じ取ってしまう変異してしまう恐怖。
体はどんどん肥えていき、膝にお腹が当たる感触がする。
全身ありとあらゆるところで自分の肉同士が触れ合う感触がし、
シャルの恐怖は最高潮に達しかけていた。

「こ、こんな……醜いのは……」

ギリギリ、そう、本当にギリギリのところで、
心が砕けそうになるのを耐えているシャル。
しかし……
何かが滑り落ちる音を聞き、鏡に映る自分の姿がトドメとなった。
体が老いていく……身長を伸ばされ、胸を大きくされ、
お尻を大きくされ、体を肥えさせられているだけでは止まらず、
どんどんと体が年老いていく。
やわらかく、張りがあった肌は潤いも弾力も失い、
無様に脂肪が垂れ下がり、
全身に汚いしみが浮かび、
顔にはシワ、シミ、できものが次々に浮かんでいく。
全身から玉のような脂汗がわき、汗臭さと、加齢臭だろうか、
シャルは自分の体臭から逃げるために鼻をつまむが、
その鼻がまるで豚のようにどんどん肥大化し、
感じるにおいがどんどん強くなる。
もう鼻の穴は自分の拳を丸ごと飲み込むほど大きく、
そして前にせり出てしまい、汗と共に鼻水まで出てしまう。
巨大で垂れ下がった胸からは何かあまいにおいがするものが
漏れ出し、全てが入り混じった匂いがシャルを狂わせる。

『ははは、いいね、楽しいね……』

もう60歳を越え、もう自分で動くことも出来ないほど体は太り、
自分ではどうしようもないほど膨れた胸を見つつ、
豚のようになってしまった巨大な鼻を鳴らし、

「いやぁぁぁぁ、もふフゴ、いはぁぁぁぁぁぁ」

歯が抜け落ち、ボロボロで色も落ちた髪の毛を掻き乱し、
汚くて不細工な弛みきった自分の体を否定しようとするが、

『何をいってるんだ? 君は……モトモトそうじゃないか』

先ほど、自分が姉達に行ったことと同じような言葉を浴びせられ、
シャルの意識は……

 壊れた。

shal3

ボロボロの屋敷の中、悲鳴と、泣き声と鳴き声が木霊する。
鏡の前で3匹の化物が涙を浮かべ、何かを否定し続ける。

『愚者』は満足したかのように、3匹の化物に背を向け立ち去った。


『愚者』は屋敷から出て、町に続く道を歩いていた。

「おい、そこの人、なにやってるんだ?」

農作業の帰りの若い男が驚いたように話しかけてきた。

『いえ、旅の途中に大きな屋敷があったので
見に行っていたんですよ』
「馬鹿いっちゃいけねぇ、あの屋敷は化物屋敷さ」
『へぇ?』
「でかすぎる乳房を持った牛女と、無茶苦茶肥えた豚女、
ソレとその2匹より醜い老婆の化物が出るって有名なんだ、
もう日も暮れる、悪いこといわん町まで乗ってけ」

そう言って『愚者』を自分の牛車へと誘う農夫、

『ソレはどうも』

わらの山に飛び乗り、ゆっくりと進む牛車。

途中、旅装束の女が引き連れた牛車とすれ違い、
一礼してやり過ごす。

「どうも」

少々なまりが混じった透明感のある声に
『愚者』は口元を軽く歪ませ、何事もないように農夫に尋ねた。

『ところで、どこかでなにかお祭りでもないですかね』
「お祭りかぁ……どうかしたのか?」
『いえ、一応商いまがいのこともしてまして、
ちょっと商品を探してるんですけど、
お祭りならイロイロと売ってますし、逆に儲けられそうですからね』

その言葉に農夫はうーんと唸り、思い出したかのように手を叩く。

「ああ、そういえば、大陸の南のほうにシュレアルとかいう国で
もうすぐお姫様が結婚するって言うの聞いたなぁ」
『へぇ』
「行ってみたらどうだ?
多分さっきの牛車もシュレアルに向ったと思うし」
『まあ、ちょっと行って見るか、アリがとうございます』
「はは、アンちゃん、商人まがいならオラに嫁さん売ってクレや」

そんな無茶なことに『愚者』は軽く唸り、
牛車を引く雌牛を見て微笑む。

『いいですよ、飛び切りのを用意してあげますよ』

その夜、その男の下に飛び切りの胸の大きさをした
若い美女が現われ、牝牛が一頭いなくなったとさ。


   ×   ×   ×


めでたしめでたし。

愚者さん良い人じゃないすかw
タイトルだけじゃなく、内容も涙目王女にリンクしてたりして、
素敵な趣向がいっぱいのお話をどうもありがとうございました。

お気に召した方には、同じく現在楽識さんに頂いた
投稿作品『優先座席』も要チェック。
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コメント

  1. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『涙目お嬢様×3』後編

    greenbackさん、お疲れ様でした。

    いえいえ、十分すぎる絵を描いていただいてアリがとうございます。

    愚者がいいひと?

    いえいえ、気まぐれなんですよ、結構。
    コノセカイに居る愚者は特に気まぐれなのでw

    愚者が優しいのは、自分の屋敷のメイドたちにだけなのでw

    改めて読み返してみると矛盾シテマスネ……

    シャルの性格が変わりすぎてて、破綻してると言っても過言ではない……


    とりあえず最後は涙目王女とクロスさせてもらいました。
    そしてすれ違ったのは……ねぇ?

    俺の中ではウチの愚者とgreenbackさんのフリーダさんが一緒の場所に居れば、恐ろしいことになるだろうなぁと思いつつの行動でしたw

  2. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目お嬢様×3』後編

    >現在楽識さん
    コメントありがとうございます。
    何度か描き直したんですが、
    どうにも想像力が追いつかなかった結果がこれだよ!

    まさかの共演は嬉しかったですね。
    なんかふたりともマイペースっぽいので、
    すれ違うだけっていうのがいかにもな感じで。

    あらためて、素敵なお話をありがとうございました。
    これからの活躍にも期待してます。

  3. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『涙目お嬢様×3』 後編

    追いつかない……やっぱカオスすぎなんですかね?

    もしよければ、何かリクエストしていただければ、時間はかかりますが何かSSとか作り上げるので、お気軽におっしゃってくださいw

    今度、エチャを開けるとき、またお誘いするかもしれないので、そのときにでもw

  4. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目お嬢様×3』 後編

    >楽識さん
    いやその、言葉が足りませんで失礼しました。
    シャルに関して補足コメントで
    「1t超級」とおっしゃってたのを読んで
    ちょっと調べてみたんですが、
    ギネスに登録されてる「世界一のデブ」で560キロだとか。
    そのほぼ倍となると、これはもう想像するしかないレベルなんですが
    実は私、肉塊級の巨デブってあんまり描いたことがなくて……
    出来上がってから見返しても、せいぜい300キロぐらい?
    1t超あるようには見えないなあというのが反省点でした。

    ただこれはあくまで私個人の技量の話ですので、
    書き手としての楽識さんがそれを受けて
    どうこうすべきだとは全く思いません。
    筆の向くままに突っ走って行けばいいんじゃないかと。
    それを踏まえた上でリクエストがあるとしたら……
    ううん、何だろ。

    変身させられた女の子の「その後」の話とかですかね。
    あくまで気が向けば、ですが。

  5. ゴゴT。 | URL | Xj9pzKFI

    Re: 『涙目お嬢様×3』 後編

    変身前後のギャップを強調して描く事の多いTFネタですが
    「貴方は元々そうじゃないか」という、
    変化前を完全否定する言葉にグッとくるものがありますー。
    その言葉通り周囲の人からの認識も変えてしまうというのも面白いです。
    greenback様の絵もなんとも濃厚な感じで、
    お二方の手による良い作品を堪能させていただきました。

    うちの魔女も少しは活躍させてやらんとなあ……

  6. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目お嬢様×3』 後編

    >ゴゴT。さん
    いいですよね、因果律変化。
    精神的にゆさぶりをかける意味でも非常に強力ですし。
    本人が「あ、そうだっけ」ってなっちゃうと個人的には
    ちょっと残念なんですけど、あくまで最後の自意識は
    残して仕上げるところが楽識さんの匠の技なんだなあ。

    絵は、変身云々より服装がしんどかった……
    基礎をおろそかにしてきたツケをしみじみ感じましたw

    そして、いよいよキリィさん指導ですか?
    wktkしつつお待ち申し上げてます。

  7. カギヤッコ | URL | /k8K4ErU

    Re: 『涙目お嬢様×3』 後編

     やはり三女も…先天的なら自業自得ですみますけど、姉二人の影響でああなっていたならまさに二重の悲劇かもで。
     でも、そんな思惑など関わる事無く愚者は行く…色々意味深な話でした。

  8. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目お嬢様×3』 後編

    >カギヤッコさん
    ターゲットが実際はどんな人間なのかとか、
    バックグラウンドがどうとかといった諸事情に流されず、気の向くままに変身させてしまうところも
    愚者の魅力のひとつなのかなあと思います。
    かっこいいなあ。

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